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保護司殺害事件:更生支援者の安全確保策を

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犯罪を犯した人や非行少年の社会復帰を支える保護観察制度の根幹を揺るがす事態だ。保護司の安全確保に向けた対策を早急に講じる必要がある。

大津市の保護司、新城博さんが自宅で殺害されているのが見つかり、警察は、飯塚さんの保護司を務めていた無職、飯塚耕平容疑者(48)を殺人容疑で逮捕した。

飯塚容疑者はコンビニ強盗の罪で執行猶予付きの判決を受けており、新庄容疑者との面談中に襲撃した疑いがあるとみられる。

飯塚容疑者がツイッター「X」(旧ツイッター)に投稿したとみられるメッセージには、「保護観察って…全然守ってくれない」などと書かれていた。警察は、飯塚容疑者が保護観察制度への不満を募らせる可能性があるとみて捜査している。

犯罪者の更生を支援する保護司が活動中に殺害されたことは、極めて衝撃的で痛ましい。事件の真相究明と動機の詳細な解明が重要だ。

保護司は全国に約4万6千人おり、法務省の保護観察官と協力しながら、保護観察中や仮釈放中の人から面接を受け、生活や就職に関する相談に応じる。保護司は法務大臣が委嘱する非常勤の国家公務員だが、実質的には無給のボランティアだ。

非行少年を担当した保護司が、その人物に自宅に放火されるなどの事件があったが、保護司が保護観察官に殺された例はこれまでなかったという。保護司が安心して活動できるよう再発防止策を講じる必要がある。

犯罪を犯した人に家庭の温かさを感じてもらうため、保護司宅で面談が行われるケースが多いが、今回のような事件が起きたことを踏まえ、地域の更生支援センターや公民館など、面談の場として利用できる施設を増やしていくことが望ましい。

保護司が被保護者との面接に不安を感じる場合には、面接官を複数人用意するなど、配慮することも重要である。

保護司は高齢化が進み、担い手不足が深刻化している。このため、同省は採用促進や処遇の見直しを進めている。今回の事件で担い手不足が加速する懸念もある。

元警察官や犯罪者対応経験のある法律専門家を登用したり、保護司を支援する制度を創設するなど、不安を払拭する取り組みが期待される。

保護司は、明治時代に慈善家が刑務所から釈放された人の支援に始まり、社会奉仕の精神に基づく制度ですが、近年は地域社会が変化し、慈善家だけに頼るには限界があります。

時代に合った制度に変えていくことが大切だ。薬物依存など保護観察対象者の抱える問題は複雑化しており、保護司の研修の充実も欠かせない。

(読売新聞2024年6月11日号より)



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