ホーム Fuji 保健省:2023年に脳死の可能性がある患者が少なくとも1万人発生、同年に脳死と診断された人はわずか132人

保健省:2023年に脳死の可能性がある患者が少なくとも1万人発生、同年に脳死と診断された人はわずか132人

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読売新聞ファイル写真
東京の厚生労働省

厚生労働省の研究班は、2023年に国内で脳死の疑いのある患者が少なくとも1万人いるとの推計をまとめた。同省がこのような推計を出すのは初めて。

同年、臓器提供のために脳死と診断された人の数はわずか132人だった。

研究チームは、より多くの家族に臓器提供の選択肢が与えられれば、潜在的なドナーの数が増える可能性があると考えている。

調査は日本医科大学病院などの医師チームが23年8月に実施し、脳死判定ができる大学病院や救急病院など895施設を対象に行った。

調査では、意識不明や瞳孔散大など脳死と判断される4つの基準を満たし、8月3日から1週間以内に適切な治療を受けたにもかかわらず症状が改善しなかった患者の数について尋ねた。

有効な回答があった601施設のうち、4つの基準を満たした患者は合計184人で、調査対象者の67%にあたる。この結果に基づき、研究チームは、調査に回答した施設だけで脳死の可能性がある患者が9,568人いると推定した。

患者が脳死であるかどうかの判定は臓器移植法に基づいて行われます。

脳死と診断された患者の臓器移植には家族の同意が必要ですが、家族が同意するかどうかを選べる機会はほとんどありません。これは、命を救うことに全力を尽くす医師には、同意する時間がないからです。また、患者の回復の見込みがないことを家族に伝えることに医師が躊躇するからです。

脳死判定前の検査は義務付けられているにもかかわらず、医療機関は検査に対して報酬を受け取っていないとの指摘もある。

さらに、脳死ドナーになるためには、医学的な基準を満たす必要があります。これらの基準には、臓器関連の問題、癌、感染症がないことが含まれます。

臓器提供の年齢制限は臓器によって異なります。例えば、肺や腎臓を提供するには、ドナーは70歳以下でなければなりません。

研究チームを代表して日本医科大学の横堀正治教授は「脳死の可能性があると推定される患者全員が臓器提供者になれるわけではない。しかし、さまざまな努力をすれば脳死ドナーの数を大幅に増やすことができ、より多くの命を救える可能性があることをこの研究は示した」と語った。

東京大学病院など、臓器移植で国内有数の大学病院は、人員や病床の不足などの理由で脳死患者からの臓器提供を断っており、大きな課題となっている。

横堀氏は「臓器移植制度に負担がかからないようネットワークを構築するとともに、脳死判定のハードルを緩和する対策も必要だ」と語った。

厚生労働省の研究班は、国内で年間少なくとも1万人が脳死になる可能性があると推計した。この数字は、臓器移植を推進する戦略を立てる上で重要な基礎データとなる。

内閣府の2021年の調査では、臓器提供について「したい」「どちらかと言えばしたい」と回答した人が4割に上った。人の命を救いたいという思いをかなえるには、患者の家族に脳死の可能性を伝え、臓器提供の選択肢を提示することが欠かせない。だが、現状では医師が担っており、精神的にも肉体的にも大きな負担となっている。

先進国の中で、日本は人口当たりの脳死者からの臓器提供数が最も少ない。米国や韓国では、医療機関が法律で脳死の疑いのある患者を臓器移植調整機関に届け出ることを義務付ける制度があり、ドナー候補が見つかる。医師へのさまざまな支援制度も整い、ドナー数の増加につながっている。日本でも同様の制度を導入するかどうか検討する必要がある。

ただ、制度導入は移植に携わる医療機関の負担を大きくする。現在、臓器提供を拒否する施設もあり、同様の制度が導入されれば事態が深刻化する恐れもある。

政府は試算を踏まえ、臓器移植に携わる人材の育成に必要な費用の支援や、関係医療機関の体制整備に向けた議論を急ぐべきだ。



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