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中国三中全会:統制強化は安定をもたらさない

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中国の習近平政権は経済よりも「国家安全保障」を重視する姿勢を改めて示しており、今後、安定した経済成長の実現はますます困難になるだろう。

中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議が北京で開催され、欧米とは異なる中国独自の発展モデルである「中国の現代化」を推進する改革を進めるとの決定が採択された。

2012年に発足した習政権は2022年に3期目を迎える。3中全会は5年に1度開催される党大会終了後、一定期間を置いて開催され、中長期的な経済政策などが議論される。今回の決定は、中国が西側諸国の民主主義国と同じ道を歩まず、自由経済を貫く姿勢を再確認したものといえる。

経済政策については、会期中に採択された声明文で「改革」という言葉が50回以上使われたが、改革の内容や方法についての具体的な方策は欠けていた。

海外の観測筋は、中国経済にとって大きな懸念事項である不動産市場の低迷に対してどのような対策が提示されるかに注目していた。

声明では不動産問題が「重要分野」の一つとして挙げられているが、「リスクの予防と緩和に向けたさまざまな措置を講じる」と述べるにとどまっており、懸念を払拭するにはほど遠く、市場関係者からは失望の声が上がっているという。

中国経済も消費の低迷に悩まされており、投資と輸出主導の従来の経済から消費と内需重視の経済への転換の必要性は以前から指摘されてきたが、その方向への改革は進んでいない。

一方、今回の会議で目立ったのは、党総書記も務める習氏の権威が強化されたことだ。

国営新華社通信は「改革者習近平」と題する長文の記事を発表し、「習近平は鄧小平に続く国内のもう一人の傑出した改革者とみなされている」などと称賛した。

中国は「社会主義現代化」を基本的に実現する期限を2035年としているが、会議では「この決議で示された改革課題は、中華人民共和国が建国80周年を迎える2029年までに完了する」という新たな目標も設定された。

習氏の3期目の任期は2027年まで続くが、その年以降に目標を設定したことで、今回の声明は習氏の4期目継続への道筋を示したのかもしれない。

声明では国家安全保障も「中国の近代化」の「極めて重要な基盤」となる要素と位置づけている。中国は昨年、反スパイ法を改正しており、今後さらに規制が強化される懸念がある。そうなれば、外国企業が中国とビジネスを行うことは避けられなくなるだろう。

習政権は、経済の停滞が続けば社会不安が高まり、国家安全保障の確保が困難になることを認識する必要がある。

(読売新聞2024年7月21日号より)



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