ホーム Fuji 中国の石炭生産が急増、世界の脱炭素化の取り組みを危険にさらす。同国の石炭生産は世界の生産量の50%以上を占める

中国の石炭生産が急増、世界の脱炭素化の取り組みを危険にさらす。同国の石炭生産は世界の生産量の50%以上を占める

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The Yomiuri Shimbun
中国最大の石炭生産地域である山西省にある石炭火力発電所。

北京 — 中国が石炭の生産と輸入を増やすにつれ、石炭生産の急増は他国の脱炭素化の取り組みを台無しにする可能性がある。中国は世界最大の二酸化炭素排出国だ。2023年には石炭生産と輸入が過去最高に達し、その多くは増大する電力需要を満たすために石炭火力発電に使用されている。

中国経済紙「経済参考報」は金曜、中国安徽省にある大手電力会社国家電力投資公司の発電所近くの約8000平方メートルの敷地に、高さ11メートルの石炭の山が積まれていると報じた。同社が保管する石炭の総量は約1600万トンと伝えられている。

中国国家エネルギー局は今夏の最大電力需要が昨年より1億キロワット以上増えると予測している。石炭備蓄量を誇示することで電力需給への懸念を払拭する狙いがあるとみられる。

中国国家統計局などによると、2023年の中国の石炭生産量は前年比3%増の47億1000万トンと過去最高を記録した。中国の石炭生産量は3年連続で過去最高を記録し、世界の生産量の50%以上を占める。また、中国の石炭輸入量も増加し、2023年には前年比62%増の4億7000万トンに達する見込みだ。

燃料のほとんどは石炭火力発電に使われている。中国政府は2023年に114ギガワット(GW)の石炭火力発電設備の追加を承認したとみられる。追加設備だけでも日本の総設備容量53GWの2倍にあたる。

中国は2021年の夏に深刻な電力不足と混乱を経験したが、それが石炭生産の増加の理由となっている。

中国の習近平国家主席は2020年の国連総会での演説で、中国は2030年までにCO2排出量をピークアウトさせることを目指すと宣言した。この演説を受けて、中国では石炭の供給が減少し、価格が1年で数倍に高騰した。多くの地方政府は、代替電源を確保することなく、割り当てられた削減目標を達成するために電力供給を削減した。

石炭生産のもう一つの理由はエネルギー安全保障だ。中国は輸入に頼る原油や天然ガスと違い、石炭に関してはほぼ自給自足だ。風力や太陽光発電も増えているが、天候に左右される。そのため、石炭は電力の安定供給を確保する中国の主力電源となっている。エネルギー業界関係者によると、こうした状況から、2030年まで石炭火力発電所の建設ラッシュが続く見通し。今後、中国の石炭火力発電能力は20%以上増加するとの見方もある。

中国の動きは、脱炭素化に向けた世界の潮流に逆行するものだ。2023年12月に開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)は、世界が2030年までに温室効果ガス排出量を2019年比で43%削減する必要があると合意した。この目標を達成するには、世界の二酸化炭素排出量の約30%を占める中国の努力が不可欠だ。

キヤノングローバル戦略研究所の杉山泰志研究主任は「中国は地球温暖化対策から撤退したわけではないが、安価で安定した電力供給を重視する傾向が強まっている」と指摘。



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