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ロシアの戦術核兵器訓練:国際社会に対する卑劣な脅迫行為

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核兵器を脅迫の道具として使うことは絶対に許されない。愚かな脅迫行為は自国の孤立をさらに深めることになるとロシアは自覚すべきだ。

ロシア国防省は、ウクライナに隣接するロシア南部の地域で戦術核兵器の使用を想定した軍事演習を開始したと発表した。

ロシアは、移動式発射台で空に向けて発射された短距離イスカンデルミサイルや、キンジャール極超音速ミサイルを搭載した軍用機の出撃の様子を公開した。両兵器とも核弾頭を搭載できる。

訓練は3段階に分けて実施されると報じられており、ロシアの戦術核兵器の配備を認めている隣国ベラルーシも次の第2段階に参加する予定だ。

ロシアのプーチン大統領は過去にも核兵器使用を示唆する発言を繰り返してきたが、ウクライナでの実際の使用を念頭に置いた核演習をロシアが公に発表したことはない。

ロシアが今、核の脅威を強めているのは、ウクライナ侵攻が泥沼化し、弾薬さえ十分に調達できないという国家の苦境の裏返しなのかもしれない。

危機を煽る卑劣な行為は看過できない。

ロシアは、この演習は西側諸国の「挑発的な発言と脅迫への対応」として実施されていると主張している。

ロシアは、米国がウクライナへの軍事支援を再開したことや、フランスのエマニュエル・マクロン大統領がウクライナにフランス軍を派遣する可能性に言及したという事実を言い訳にしたいのかもしれない。

しかし、それは根拠のない非難だ。この状況を引き起こしたのはロシア自身の蛮行だ。

大都市を一瞬にして破壊し、多くの住民を死滅させる戦略核兵器に比べ、戦場など局地的に使用される戦術核兵器は被害が少ないといわれる。しかし、広島・長崎の惨状を見れば、核兵器の殺傷力や残虐性が通常兵器とは比べものにならないことは明らかだ。

このため、米国とソ連(ロシア)が激しく対立していた冷戦時代でも、両国は核戦力を慎重に扱っていた。プーチン大統領はこうした歴史を学んで教訓を吸収できなかったのだろうか。

ウクライナでは、ロシアの侵略が始まってから2年以上にわたり、ロシア軍が多くの民間人を虐殺し、子どもたちをロシアに強制的に移送してロシア人に養子として引き渡している。その非人道性は看過できない。

現在5期目を迎えているプーチン大統領は、2012年から国防相を務めてきたセルゲイ・ショイグ氏に代わり、経済専門家を後任に任命した。これは戦時経済体制の構築が目的だとの憶測を呼んでいる。

プーチン大統領が軍事作戦を指揮しながら、合理的な判断を拒否するならば、極めて危険であろう。

(読売新聞2024年5月24日号より)



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