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フランス国民議会選挙:右派勢力の台頭は阻止されたが、分裂はより深刻化

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欧州で勢いを増している右派勢力が議会で最大勢力になることは阻止されたものの、フランス政界の分裂は深まった。マクロン大統領は政権運営で困難な局面に直面することになるだろう。

フランス国民議会(立法府の下院)の第2回投票の結果、左派連合が第1位に躍り出た。マクロン政権を支持する与党中道連合は議席を大幅に失い、第2位に転落した。

第1回投票で得票数トップだった右派の国民連合党は3位に沈んだ。最終投票では、与党と左派勢力が協力して、自分たちから1人だけ候補者を立て、国民連合党に対抗する単独候補者を立てようとした。この戦略は成功した。

NRはかつて反ユダヤ主義やその他の外国人排斥を唱え、欧州連合からの離脱を主張した極右運動に端を発している。こうした勢力が議会を掌握することへの懸念から、与党の中道派と左派の間で間に合わせの連携が生まれた。

比例代表制で行われた6月の欧州議会選挙でNRはフランスの第一党となった。過激な主張を封印し、「普通の政党」に変身したという印象を与える戦略は成功したと言える。

マクロン大統領は危機感を募らせ、直ちに下院を解散した。選挙区ごとの得票数で争われる下院選挙では、右派勢力に勝てると計算したようだ。

その計算は一部当たっていたが、マクロン氏に反対する左派が下院でトップ勢力となり、不安定な政局は今後も続くとみられる。

下院は三大勢力のいずれもが絶対多数を獲得できず「宙吊り議会」となっている。法案ごとに各派閥との協力を模索する必要がある。

左派は、マクロン大統領が実施した食料品など生活必需品の価格上限設定や年金支給開始年齢引き上げの撤回を求めている。財政規律を重視してきたマクロン大統領の政策とのギャップは大きい。

外交と安全保障は大統領の専権事項だが、議会が予算を承認する権限を持つ。

左派も首相のポストを要求している。異なる政治グループの大統領と首相の「共存」は2002年以来初めてとなる。政策調整はより複雑になり、必然的に困難になるだろう。

マクロン氏は中道路線をとっているが、年金問題などで弱者を切り捨てているとの批判が相次いでいる。こうした姿勢が左派、右派双方の過激派勢力を刺激し、社会の分断を広げてきたことは否定できない。

パリ五輪を前に、フランスが政治的混乱を速やかに収拾し、欧州の主要国としての安定を取り戻すことが期待される。

(読売新聞2024年7月9日号より)



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