2024年7月8日 14時12分(日本時間)
パリ(ロイター) – フランスは、予想外の左派の躍進により極右政党の政権獲得を目指すマリーヌ・ル・ペン氏の試みが阻止され、議会が宙吊り状態となり、月曜から始まる組閣交渉が難航する可能性に直面している。
日曜日の選挙後、左派の新人民戦線(NFP)が国民議会で主要勢力として浮上したが、どのグループも過半数を確保できず、NFPが少数派政権を樹立するか、あるいは、幅広く扱いにくい連立政権が樹立される可能性もある。
この結果はエマニュエル・マクロン大統領に痛烈な打撃を与え、ユーロ圏第2位の経済大国を宙ぶらりん状態に陥れ、パリ五輪開催のわずか数週間前に政治的不安定期の到来を告げることになった。
マクロン大統領は議会を極度に分裂させることになり、欧州連合やさらに広い範囲でのフランスの役割が弱まり、国内政策を推進することが難しくなるとみられる。
ル・モンド紙が引用した内務省のデータによると、左派は182議席、マクロン氏の中道連合は168議席、ル・ペン氏の国民連合(RN)とその同盟は143議席を獲得した。
ガブリエル・アタル首相は辞意を表明すると述べたが、政権樹立という困難な課題が待ち受けていることを考えると、大統領が直ちに辞意を受け入れるかどうかは不明だ。アタル首相は暫定首相として留任する意向を示した。
「もちろん、必要とされる限り職務は遂行する。わが国にとって非常に重要な日(オリンピック)の前夜に、そうしないわけにはいかない」とアタル氏は、マクロン氏の同盟が屈辱的な挫折を味わったことが明らかになる中、述べた。
フランス共産党、極左の屈しないフランス、緑の党、社会党からなるNFPの各党は、今後の進め方について初めて協議するため一夜会合を開いた。
屈しないフランス党の扇動的なリーダー、ジャン=リュック・メランション氏は、新首相はNFPから出るべきと語った。しかし、同連合にはリーダーがおらず、党派間では誰が首相にふさわしいかをめぐって激しく意見が分かれている。
マクロン政権で首相を務めたエドゥアール・フィリップ氏を含む中道派の有力者らは、安定した政権を確保するための協定に取り組む用意があると述べた。
日曜日、投票結果の予想が発表された後、ユーロは下落した。
「フランスの立法能力に関しては、本当に空白状態になるだろう」とロンドンのマネックス・ヨーロッパの外為分析責任者、サイモン・ハーベイ氏は語った。
ルペン氏のRNにとって、この結果は数週間にわたる世論調査で一貫して楽勝すると予測されていた状況とは大きく異なるものだった。
左派と中道派の連合は先週の第1回投票後に協力し、三つ巴の選挙から多数の候補者を引き抜き、統一された反RN票を作り上げようとした。
ルペン氏の子分であるRN党首のジョーダン・バルデラ氏は、最初の反応として、反RN勢力間の協力を「恥ずべき同盟」と呼び、フランスを麻痺させるだろうと述べた。
しかし、2027年の大統領選挙で同党の候補者となる可能性が高いルペン氏は、前回の選挙と比べてRNが大きな躍進を遂げた日曜日の投票は、将来への種を蒔いたものだと語った。
「我々の勝利は単に遅れただけだ」と彼女は言った。
日曜日の夜が明けると、左派支持者らの祝賀ムードの中、共和国広場のマリアンヌ像が花火でライトアップされた。マリアンヌは理性、自由、共和国の理想を象徴するフランスの国民的シンボルである。
共和国広場の23歳のデザイナー、バティスト・フーラスティエさんは「私たちは予想していなかったし、世論調査でも予想はしていなかった。フランス国民が再び極右を阻止することに成功したことを嬉しく思う」と語った。
しかし、次の政権が非難の余地のないものでなければ、右派が勢力を拡大し次回は勝利するかもしれないと彼は懸念している。
「ハング・パーラメント(宙吊り議会)では難しいだろうが、極右が(先行する)場合よりはましだ」と彼は語った。