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トランプ判決:米国の分裂がさらに深まる可能性が懸念される

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自分に対する判決を受け入れず、裁判の公正さを否定して政治闘争の道具にしようとする姿勢は極めて自己中心的であり、米国内の分断がさらに深まるのではないかと懸念される。

ニューヨーク州の裁判所の陪審は、ドナルド・トランプ前米大統領が不倫にかかわる口止め料を隠すために記録を偽造したとされた事件で有罪評決を下した。刑事裁判で元米大統領が有罪判決を受けるのは初めて。判決は7月に言い渡される予定。

トランプ氏は2016年の大統領選前に弁護士を通じて不倫関係にあった女性に約2千万円相当の口止め料を支払い、その事実を隠すため家族が経営する会社の事業記録に虚偽の記載をしていたことが発覚した。

判決が言い渡された後、トランプ氏は不倫や記録の不正処理への関与を否定し、裁判そのものを批判した。バイデン米大統領の政権が政敵を傷つけるために仕組んだものだとの趣旨の発言をした。

本来、法の下では国家指導者も国民も平等であり、法治国家においては司法の判断は国民全員が従うべきものである。指導者を目指す重要人物がこの民主主義の基本原則を否定すれば、司法への信頼は失われる。

トランプ氏は11月の大統領選で共和党の指名を獲得することが確実だ。米国の制度では有罪判決を受けても大統領選に出馬できるが、有罪判決を受けた人物が大統領を目指すのは極めて異例だ。

トランプ氏の言動が支持基盤を強化する可能性があるという事実は深刻​​だ。共和党支持者の多くはトランプ氏の主張を額面通りに受け止め、民主党とバイデン政権への敵意を強めている。

これは、米国における分裂と混乱がいかに根深いかを示している。

報道によると、トランプ氏はこの判決に対して控訴する予定だ。同氏は他に3件の裁判で起訴されている。

最も深刻な事件は、4年前の大統領選挙での敗北を覆すために、投票集計を妨害しようとしたり、ワシントンの国会議事堂を襲撃して占拠するよう人々を扇動したりした疑いがある。他の2件については、1件は機密文書の盗難に関連し、もう1件はジョージア州の大統領選挙の結果を覆そうとした疑いがある。

トランプ氏は社会の安定を脅かし、国内の分断を促すような発言や行動を厳に慎むべきだ。

ロシアのウクライナ侵略は長期化し、イスラエルのパレスチナ自治区ガザへの攻撃も終わりが見えない。国際秩序の再構築には米国の関与が不可欠だ。民主陣営を率いる超大国として、米国には責任を果たしてほしい。

(読売新聞2024年6月1日号より)



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